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正規雇用保育士と非正規雇用保育士の仕事内容
保育士の仕事内容は、子どもとの関わりの他にも保護者対応や保育計画、指導記録作成などの事務作業を含め多岐に渡ります。しかし、非正規雇用の保育士は主に子どもの保育に携わり、事務作業を行なわないところがほとんどでしょう。
そのため非正規保育士を含めると保育士人数は満たしているけれど、正規保育士の仕事量が増えるという状態が続き、正規保育士が疲弊しているという状態になってしまうのです。
非正規雇用の保育士が増えている理由とは?
正規保育士の仕事内容は多岐に渡ります。子どもとの関わりの他にも保護者対応や事務作業、行事の計画実行や職員会議など、まさに分刻みのスケジュールです。
しかし、国が定めた保育士設置基準では保育士が勤務をする全ての時間を子どもとの関わりに当てられるという計算なので、それ以外の仕事が勤務時間中に終わらずに残業や持ち帰り仕事が増えるという結果に…。
実際に正規保育士の勤務実態を見てみると、週当たりの勤務日数が6日以上と回答している保育士が31.2パーセント。1日当たりの勤務時間が9時間以上と回答した保育士が47.6パーセントと非常に高い比率となっています。
保育士の勤務実態(「東京都保育士実態庁舎報告書」)
図:保育士の勤務実態
(「東京都保育士実態庁舎報告書」)
全体 | 正規保育士 | 有期契約フルタイム | 有期契約パートタイム | ||
---|---|---|---|---|---|
週当たり勤務日数 | 2日以下 3日 4日 5日 6日以上 |
3.4% 5.9% 8.2% 58.8% 21.4% |
– – – 65.7% 31.2% |
– – 9.3% 73.1% 14.1% |
10.4% 18.7% 22.0% 41.3% 5.7% |
1日当たり勤務時間 | 3時間未満 3~5時間未満 5~7時間未満 7~9時間未満 9時間以上 |
2.4% 8.7% 9.3% 41.3% 33.7% |
– – – 46.0% 47.6% |
– – 4.1% 60.5% 1.8% |
7.1% 27.6% 27.4% 26.3% 8.4% |
プライベートな時間を確保することが難しいほどの仕事量に、退職する保育士も多くいます。そして、退職後に復職しようと考えた時には、勤務時間が一定で正規保育士に比べて仕事量の少ない非正規保育士という働き方を希望する人が増え、近年の正規保育士の減少、非正規保育士の増加という流れに繋がっているのです。
子どもとの関わり以外の時間を確保することの重要性
保育士は専門的知識を持って子どもの保育と保護者支援を行う専門職です。それを踏まえて保育士所保育指針では、「保育の計画や保育の記録を通して」「自らの保育実践の振り返りや職員相互の話し合いを通じて」「その専門性の向上や保育実践の改善に勤めなければならない」と定められています。
この保育所保育指針に則って、保育士は保育計画の立案、保育記録の作成、そして職員間の話し合いを行い、保育を目指しています。
しかし、国で定められた保育士の設置人数は勤務時間である8時間全てを子どもとの関わりに充てられるという計算です。その結果、本来ならば勤務時間中に行うべき事務作業を終えることができずに残業をして終わらせる。担任同士の話し合いの時間が持てずに、勤務時間外に話し合いをするという状況に陥っている保育士が多く見られます。
実際に保育士として働く人に「現在の職場で改善してほしいこと」を尋ねた結果、給与・賞与等の改善に続いて、「事務・雑務の軽減」が57.9パーセントと非常に高い比率を占めています。
現在の職場で改善してほしいこと
図:現在の職場で改善してほしいこと
(上位6項目)
1.給与・賞与等の改善 | 2.事務・雑務の軽減 | 3.職員数の増員 | 4.未消化休暇の改善 | 5.勤務シフトの改善 | 6.雇用の安定化(正規登用) | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|
北海道 | 正規保育士 有期契約保育士 総計 |
62.7% 61.5% 62.1% |
57.9% 26.6% 41.6% |
55.9% 36.5% 45.7% |
42.5% 24.4% 33.1% |
26.3% 23.2% 24.7% |
16.0% 35.3% 26.2% |
東京都 | 正規 有期契約フルタイム 有期契約パートタイム 総計 |
68.5% 67.0% 39.1% 59.0% |
47.7% 25.3% 14.7% 34.9% |
49.0% 35.9% 26.4% 4.04% |
43.6% 25.6% 11.3% 31.5% |
33.3% 23.3% 17.9% 27.4% |
6.6% 38.5% 14.6% 12.6 |
神奈川 | 総計 | 56.2% | 36.2% | 42.1% | 30.0% | 24.2% | 10.1% |
また、非正規保育士は基本的に事務作業は行いませんので、非正規保育士が増えるにつれて正規保育士の事務作業の負担が増えているという実態もあります。
そんな状態を改善するためには、保育士が子どもとの関わり以外に当てる時間を確保する必要があります。子どもとの関わりの時間を勤務時間のうちの6時間など一定に定め、残りの勤務時間を事務作業や職員間の話し合いに充てるというように、園単位もしくは国を挙げて定めることが求められているのではないでしょうか?
保育士の専門性は求められるけれど、プライベートな時間を削らないと全ての仕事をこなすことができないという現在の状況では、正規保育士が益々減っていく状況を食い止めることは難しいでしょう。
保育士人数の見直しと仕事負担軽減
子どもとの関わり以外の仕事に充てる時間を確保するためには、その時間に子どもの保育を担当する保育士が必要になります。保育士は平均して国の基準の1.8倍から2倍程度配置されている場合が多いですが、正規保育士の減少から非正規保育士で保育士人数を満たしているという状態です。
正規保育士の仕事負担軽減には繋がらない理由
非正規保育士も保育士資格を保有していますが、子どもの怪我など何か問題が起きた時に保護者への説明などの責任を負うのは正規保育士です。そのため、多くの正規保育士は非正規保育士のみに保育を任せることはせずに、子どもとの関わりも事務作業も自分でこなしています。それでは、子どもの人数に対する保育士人数が多く設置されていたとしても、正規保育士の仕事負担軽減には繋がらないのです。
また、国の政策として待機児童対策のために無資格者の活用や自治体の上乗せ基準を国の保育士設置基準に引き下げるなどの規制緩和策を打ち出しています。これでは待機児童問題は一時的に解消されるかもしれませんが、正規保育士の負担は益々増え保育士不足につながると言わざるを得ません。
正規保育士として働きたい環境づくり
保育士人数の確保のためには、無資格の人でも保育士として働けるような規制緩和ではなく、正規保育士が働きたいと思える安定した給与額と職場環境の改善が必要なのではないでしょうか?そして子どもとの関わりの他の仕事も責任を持って行える正規保育士を増やすことで正規保育士全体の仕事負担を減らし、事務作業や話し合いの時間を確保できる体制づくりを行うことで、長い目で見た時の保育士不足解消に繋がると言えるでしょう。
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