詳しく知ろう!生活保護制度~8つの扶助

保育士試験の社会福祉の科目では、生活保護や生活保護法に関する問題が出題されています。特に生活保護8つの扶助とその内容についてはよく聞かれるところです。「生活保護なんて自分とは無縁だ」と思う方もいるかもしれません。しかしどんな人でも、突然病気にかかり働けなくなるなど、生活保護を受けざるを得ない状況になる可能性があるのではないでしょうか。また、保育士として勤務していく中で、保護者から生活保護を受けたと相談を受けることもあるかもしれません。名称だけの暗記に留まることなく、引き出しの多い保育士を目指しましょう。
平成29年度 前期【社会福祉】問11

次の文は、生活保護制度に関する記述である。適切な記述を○、不適切な記述を× とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。
「生活保護法」は、生活困窮を事前に予防することを目的としている
住宅扶助は、地域によって基準額が異なる。
申請後の資産調査の結果、保護の対象外となる場合がある。
小学校の給食費は、教育扶助として給付される。
(組み合わせ)
  A B C D
1 〇 〇 〇 ×
2 〇 〇 × 〇
3 〇 × 〇 ×
4 × 〇 〇 〇
5 × 〇 × 〇

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生活保護制度とは?

生活保護制度とは、資産や能力のすべてを活用してもなお生活に困窮する方に対し、困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障し、その自立を助長する制度。扶養義務者の扶養は、生活保護法による保護に優先します。また、支給される保護費は、地域や世帯の状況によって異なっています。

この「すべてを活用しても」という文面からもわかるように、誰でも簡単に受けられるものではなく、その人自身が持っている資産をすべて使い、できることを全てした上で、それでも生活に困った場合のみ受けられる制度になります。当然、生活に困った時に行政から手を差し伸べてくれるわけではなく、要保護者の申請によって開始されます。

また、裕福な生活が保障されるのでなく、あくまで最低限度の生活が保障される制度です。これは、日本国憲法 第25条の すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。という生存権の保障を具体化したものです。

資産とは…預貯金・生活に利用されていない土地や家屋。これらがあれば、売却をして生活費にまず充てる必要がある。既に生活している家が持ち家でも、それは生活に必要な場所ですので対象とはなりません。

能力とは…働くことが出来る人は、その能力に応じて働く必要がある。自分でお金を生み出すことが出来る状況にあるなら、そちらを先にしてくださいということですね。

あらゆるものの活用とは…年金や手当など他の制度でまず休符を受けることができる場合はそれらを活用。他の制度で使えるものがあれば先にそれを使い、生活保護は最後の最後にしてください、という意味ですね。

扶養義務者の扶養とは…親族等から援助を受けることができる場合は、先に援助を受けてくださいということです。

以上の説明は、次の原則に則って摘要されていますので、法律と併せてチェックしておくと良いでしょう。

生活保護法第2条(無差別平等の原則)
   
全ての国民に無差別平等に適用されるという内容。
生活保護法第4条(補足性の原則)
   
あらゆるものを生活に活用してもなお、最低生活の維持が不可能なものに対して適用されるという内容。
生活保護法第7条(申請保護の原則)
      
原則として要保護者の申請によって開始されるという内容。
生活保護法第10条(世帯単位の原則)
      
要保護者本人だけでなく世帯単位で能力の活用等をする必要があるという内容。

生活保護費はいくら支給されるの?

最低生活費に関しては、おおよその目安を計算するためのサイトやソフトなども多く出回っているようですが、具体的にこの金額、と一括で定められているわけではありません。要保護者の住んでいる地域や、年齢、世帯人数などによって必要な金額は変わります。

厚生労働大臣が定める基準で計算される最低生活費というものがあります。その最低生活費と収入をして、収入が最低生活費に満たない場合は、健康で文化的な最低限度の生活を営むことが出来ていないと見なされ、最低生活費から収入を差し引いた差額が保護費として支給されるしくみです。

相談や申請は、住んでいる地域を所管する福祉事務所や、福祉事務所を設置していない町村は町村役場です。事前に相談→保護の申請→保護の決定のための調査→保護費の支給という流れになります。その間も福祉事務所のケースワーカーによる訪問調査があります。また、就労することで生活が改善する可能性のある方は、就労に向けた助言や指導を受けます。

生活保護の種類~8つの扶助

生活保護には8種類の扶助があります。
扶助とは助けること。力を添えること。という意味があります。(広辞苑 第六版) 

2017年12月8日には、厚生労働省が次年度の生活保護費を見直しし、食費や光熱費などに充てる「生活扶助」を引き下げる案を社会保障審議会の部会に提示したとのこと。一般の低所得世帯の消費支出よりも生活保護の支給額が多いと調査結果が出たことによる見直しだろそうです。この生活扶助は、日常生活に必要な費用であり生活に直結しているので、内容を知っている方も多いのではないでしょうか。

生活保護の給付方法は、金銭が直接支給される金銭給付と、医療の給付や施設の利用、サービス提供など金銭以外の方法で給付する現物給付の2種類があります。

生活扶助
日常生活に必要な扶助。食費・被服費・光熱費等のこと。金銭給付。
医療扶助
けがや病気で医療を必要とする時の扶助。これは現物給付です。金銭が直接支給されるのではなく、投薬、処置、手術、入院等の直接給付になるということです。そのため、国民健康保険や後期高齢者医療制度からは脱退することになります。
教育扶助
被保護家庭の児童が、義務教育を受けるのに必要な扶助。原則金銭給付。高等学校の就学費は生業扶助に該当します。
住宅扶助
家賃・地代等やその補修などを必要とする時の扶助。上限ありの金銭給付。
介護扶助
被保護者が要介護、または要支援と認定された場合の扶助。例えば施設入所など。現物給付です。
出産扶助
被保護者が出産する時に行われる扶助。金銭給付。
生業扶助
生業に必要な資金、器具や資材を購入するため、または技能を習得するため等の扶助です。平成17年度より高等学校就学費がこの扶助により支給されています。金銭給付。
葬祭扶助
被保護者が葬儀を行う必要があるとき行われる給付。原則金銭給付。

介護扶助と医療扶助以外のものは、原則金銭給付、と覚えておきましょう。



厚生労働省 生活保護の被保護者調査(平成29年10月分の概数)では、生活保護を受けている人は2,125,317人。約200万人もの人が生活保護を受けているのです。以前と比べて受給者数は減ったものの、一人暮らしの高齢者世帯の増加により、世帯数は年々増えています。保育士としては、ひとり親世帯などで、正規雇用のチャンスに恵まれない、周囲の協力が無いため、フルタイムでの勤務が難しいなどで生活保護を受けざるを得ない保護者に接することもあるでしょう。そのような人に寄り添う保護者支援をしていくためには、まずは保育士が詳しく知る、理解するということが大切なのではないでしょうか。