国民運動計画「健やか親子21(2次)」ってどんな計画?

平成29年度 前期子どもの保健問3では、健やか親子21(2次)について出題されています。健やか親子21(2次)は、平成27年度から始まった新たな計画です。保育士試験は常に新しい情報に目を向けていかなければならないのですね。特に、長く保育士試験にチャレンジしている方や、保育者として長く働いている方は、ご自分の知識を新しい情報に上書きする必要があります。そこで今回は、健やか親子21(1次)の取り組みから振り返り、健やか親子(2次)についても説明していきます。
平成29年度 前期 【子どもの保健】問3

次のうち、「健やか親子21(第2次)」で示された母子保健の基盤課題および重点 課題として不適切な記述を一つ選びなさい。

1.育てにくさを感じる親に寄り添う支援
2.学童期・思春期から成人期に向けた保健対策
3.未婚率上昇への対策
4.子どもの健やかな成長を見守り育む地域づくり
5.妊娠期からの児童虐待防止対策

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健やか親子21とは?

健やか親子21とは、平成13年(2001年)から始まった、母子の健康水準を、現状より向上させるための、様々な取り組みを推進する国民運動計画です。現在は健やか親子(2次)の計画がと取り組まれています。

現在、母子保健を取り巻く状況は深刻です。厚生労働省は以下のものを状況として挙げています。

  • 少子化の進行
  • 晩婚化・晩産化と未婚率の上昇
  • 核家族化・育児の孤立化等
  • 子どもの貧困
  • 母子保健領域における健康格差(小学生の肥満児の割合、3歳児の虫歯など)

これらの悪い状況を改善させるために、様々な取り組みを計画したものが健やか親子21です。

健やか親子21(1次)

まず、健やか親子21(1次)について振り返ります。
健やか親子21(1次)は平成12年(2000年)に国が策定し、平成13年(2001年)から平成26年(2014年)まで続きました。健やか親子21(1次)には大きく分けて4つの目標がありました。

4つの目標

1.思春期の保健対策の強化と健康管理の推進
十代の自殺率や望まない妊娠による人口妊娠中絶実施率、知識のない子どもたちへの性感染症罹患率の減少を掲げました。
2.妊娠・出産に関する安全性と快適さの確保と不妊への支援
妊産婦の死亡率を半減させること。産後うつ病を減少させること。産婦人科医や助産師の数が不足している現状があったため、これを増加させることを掲げました。
3.小児保健医療水準を維持・向上させるための環境整備
全出生数中の低出生体重児の割合を減少させること。子どもの死亡率上位に入っている不慮の事故での死亡率を半減させること。そして、低出生体重の原因の1つとも言われている妊娠中の喫煙率をなくすこと。子どもに大きな悪影響を及ぼす、育児期間中の両親の自宅での喫煙率をなくすことを掲げました。
4.子どもの心の安らかな発達の促進と育児不安の軽減
年々増加している児童虐待による死亡率を減少させること。母乳育児の良さが挙げられている中、母乳育児の割合を更に増加させること。親子の課題も多様化してきている中で、親子の心の問題に対応できる技術を持った小児科医の割合を増加させることを掲げました。

これらの改善に向けて、国だけでなく、医療機関、研究機関、学校、企業、NPO法人、地方公共団体、健やか親子21推進協議会と様々な機関が連携と協働を行い、取り組んだ13年間でした。

平成25年の最終評価

平成17年と平成22年の中間評価を経て、終了が近づいた平成25年に最終評価を行っています。改善された部分は多く、最終報告では、74項目中、60項目(81.1%)に改善が見られたという結果がでています。8項目に関しては変わらない、4項目に関しては評価出来ないという報告でしたが、次の2項目については悪くなっていると報告されました。

  • 十代の自殺率
  • 全出生数中の低出生体重児の割合

その結果と現状を取り巻く課題なども踏まえて、健やか親子21(2次)がスタートすることとなりました。

健やか親子21(2次)

現在、取り組みをされているのが健やか親子21(2次)です。
これは、平成27年度(2017年)から始まり、平成36年度(2026)までの現在進行形の計画・取組です。

この計画では、10年後に目指す姿を、「すべての子どもが健やかに育つ社会」としています。地域や家庭環境の違いに関わらず、同じ水準の母子保健サービスが受けられることを目標としているのです。
その目標には基礎課題3つ、そして重点課題2つが設定されています。

基礎課題と重点課題

【基礎課題3つ】

基礎課題A:
切れ目ない妊産婦・乳幼児への保健対策
妊娠期から出産、育児期まで切れ目無く、各事業機関間の連携体制を強化することを掲げています。
基礎課題B:
学童期・思春期から成人期に向けた保健対策
様々な分野が協力して、児童や生徒が自分の心身の健康に関心を持てるような対策を掲げています。
基礎課題C:
子どもの健やかな成長を見守り育む地域づくり
子育て世代の親を孤立させないように、国や地方公共団体だけでなく、様々なNPO法人や、母子愛育会、母子保健推進員等との連携を進めることを掲げています。

【重点課題2つ】

重点課題1:
育てにくさを感じる親に寄り添う支援
育てにくいと感じる親、育てにくい子ども、様々な育てにくさに寄り添う支援の充実を掲げています。
重点課題2:
妊娠期からの児童虐待防止対策
児童虐待の発生を防止するためには、妊娠期からの情報提供や早期予防が大切だとし、新生児訪問等の母子保健事業と関係機関の連携を強くすることを掲げています。

これらの課題は29年度前期の子どもの保健に出題されています。

●平成29年度 前期 子どもの保健 問3
次のうち、「健やか親子21(第2次)」で示された母子保健の基盤課題および重点課題として不適切な記述を一つ選びなさい。

  1. 育てにくさを感じる親に寄り添う支援
  2. 学童期・思春期から成人期に向けた保健対策
  3. 未婚率上昇への対策
  4. 子どもの健やかな成長を見守り育む地域づくり
  5. 妊娠期からの児童虐待防止対策

不適切な記述は3ですね。この問題に関しては課題を暗記していないと解答することが出来ません。健やか21(第2次)の要となる部分ですので、保育士試験を受験する方は、しっかり覚えておきましょう。



健やか親子21の骨組みを見ただけでは、漠然とし過ぎていて、どのような取り組みなのか具体的にイメージがわかないと思われた方も多いかと思います。実際、取り組み内容は、地域によっても異なりますし、一つひとつの小さな取り組みが集まって形になっていくため、どれが健やか親子21の取り組みであるのかははっきり目に見えないことも少なくないでしょう。しかしながら、保育士として、母子の心が安定するよう寄り添ったり、虐待に繋がらないように保護者を支えるなど、少しでもできることで、同じ方向を向いていきたいですね。