保育所・幼稚園・認定こども園、それぞれの設置基準とは?

子どもの育ちを援助するための保育所、幼稚園、認定こども園。利用できる年齢や基準は違いますが、どの施設も子どもが安心できる場所であるという事に違いはありません。しかし施設設置基準を見ていくと、それぞれの施設の基準の差も見えてきます。子どもが健やかに育つ場所としての役割を、施設設置基準を元に考えていきましょう。

保育所の施設設置基準とは?

保育所の施設設置基準は基本的に、子ども1人に対しての保育士人数や設備の面積が定められています。設備の面積は、2歳未満児と2歳以上児で違いがあり、保育室以外にトイレや調理室など、子どもが生活する中で必要な施設の設置が定められています。

2歳以上児がいる保育所では、園庭の設置も義務付けられていましたが、2001年の規制緩和によって近所に園児が利用可能な公園がある場合には、園庭を設置するという基準がなくなりました。

保育所の最低基準(設備運営基準)の概要

1.職員

・保育士

(児童) (保育士)
ゼロ歳児 3 1
1・2歳児 6 1
(児童) (保育士)
3歳児 20 1
4歳児以上児 30 1

・嘱託医及び調理員は必置(調理業務の全般を委託する場合は調理員を置かない事ができる)

2.設備(施設)

・2歳児未満児
  • 乳児室・・・1.65㎡/人
  • ほふく室・・・3.3㎡/人
  • 医務室、調理室、便所の設置
・2歳児以上児
  • 保育室又は遊戯室・・・1.98㎡/人
  • 野外遊技場・・・3.3㎡/人(保育所以外の公園などでも代替可)
  • 調理室、便所の設置

3.保育時間

・1日につき8時間原則(地域事情など考慮し、所長が定める)

4.非常災害に対する処置

・消化用具、非常口などの設置、定期的な訓練の実施

5.保育室等を2階以上に設ける場合の条件

・耐火建築物、傾斜路又は屋外階段、転落防止設備、調理室とそれ以外の部分の防火戸による区画、非常警報器具、カーテン等の防炎処置

6.児童の処遇

・保育の内容:養護及び教育を一体的に行いその内容は厚生労働大臣が定める(保育所保育指針の遵守) ・給食:必要な栄養量を含有、献立の作成、自園調理原則(3歳以上児は一定条件下で外部搬入容認) ・健康診断の実施

7.苦情への対応

・苦情受付窓口の設置等苦情対応のために必要な借置 ・都道府県・市町村からの処遇に関する指導・助言に従っての必要な改善運営適正化委員会への協力

施設の利用方法の工夫

保育所は、子どもが生活をする場です。食事もお昼寝もしますし、製作や室内での運動遊び等の活動も行います。それらを全て同じ部屋で行うことは保育士にとっても子どもにとっても落ち着かない状態になる可能性があります。

そのクラス毎の活動の他に、午睡は1歳児クラスで行い、食事は2歳児クラスで全員で食べるなど、限られた設備の中で活動によってクラスの枠を超えた施設の利用方法を工夫している保育所もあります。

幼稚園の設置基準とは?

幼稚園では、保育所における設置基準とは少し考え方が違います。クラス毎の幼児数や施設の面積が定められているのです。例えば、1クラスの人数は35人以下。園舎の面積は180平方メートル。園庭の面積も定められており、クラス数が増えるごとに必要な面積も増えていきます。

幼稚園設置基準の概要

1.1学級の幼児数
・35人以下を原則とする
2.園地・園舎・運動場
・園舎は2階建て以下を原則とする。 園舎を2階建てにする場合および、特別の事情があるため、園舎を3階建て以上にする場合には、保育室・遊戯室・便所の施設は1階に置かなければならない。(ただし、園舎が耐火建築物で、幼児の避難上必要な施設を備えるものにあっては、これらの施設を2階に置くことができる。)
・園舎および運動場は、同一の敷地内又は隣に隣接する位置にあることを原則とする。
3.施設及び設備など
・下記の施設・設備を備えないといけない。(ただし、特別な事情があるときは、保育室と遊戯室および、職員室と保育室とは、それぞれ兼用することができる。)
  • ①・職員室・保育室・遊戯室・保健室・便所・飲料用水設備・手洗い用設備・足洗用設備
  • ②保育室の数は、学級数を下ってはならない
  • ③飲料用設備は、手洗い用設備または足洗用設備を区別すること
  • ④飲料水の水質は、衛生上無害であることが証明されたものであること。
4.遊具・教具
・幼稚園には、学級数および幼児数に応じ、教育上、保健衛生上および安全上必要な種類および数の園具、教具を備えるとともに、常に改善し、補充しなければならない。
5.その他の施設設備
・次の施設および設備を備えるように努めなければならない。 (放送聴取設備・映写設備・水遊び場・幼児清浄用設備・給食施設・図書室・会議室)
6.園舎の面積
・1学級:180㎡
・2学級:320+100×(学級数-2)㎡ (3学級から1学級ごと100㎡増)
7.運動場の面積
・2学級以下:330+30×(学級数-1)㎡
・3学級以上:400+80×(学級数-3)㎡ (4学級から1学級ごと80㎡増)

十分な活動ができる園庭の設置

この基準は、保育所の設置基準にはないものです。あくまでも保育所は子ども1人に対する保育士の数や面積で最低基準を計算します。極端に言えば、面積の広い1つの部屋に大勢の子どもが一緒に過ごすことも、子どもの人数に対する保育士の数と施設の面積を満たしていれば可能なのです。

小学校に進級した時には、各クラスに分かれて活動を行います。クラス毎の基準を設けているということ、そして思い切り身体を動かして過ごす事が必要とされる時期に、園庭という安全な場所が確保されているという事は、子どもにとってプラスになる基準ですよね。幼稚園と保育園という、同じく子どもが育つ場としてはこの基準には差がある様に感じてしまいます。

しかし、だからと言って幼稚園の基準が十分であるという訳ではありません。1クラス35人につき幼稚園教諭1人という基準。これは国際的にみると低水準です。現場の様子を把握しながらより良い基準へと改訂されていく事で、幼稚園に通う子どもがより充実した園生活を送れる様になることを願います。

認定こども園における設置基準とは?

認定こども園における設置基準は幼保連携型認定こども園とそれ以外に分けられています。それ以外というのは、幼稚園型、保育所型、地域裁量型です。

義務付けられている資格

2つの基準の違いとしては、幼保連携型認定こども園では、保育士資格と幼稚園教諭免許の両方を保有している保育教諭の配置が義務付けられています。それ以外の認定こども園では、3歳未満児は保育士、3歳以上児は幼稚園教諭と保育士資格の両方を保有していることが望ましいが、どちらかでも良いとされています。

3歳以上児で1日8時間という保育所と同等の時間を利用する園児への対応は、保育士資格保有者でなければいけないとされているものの、幼稚園型と地域裁量型では、保育士資格を取得しようという意志があれば良いともされています。

同じ認定こども園であっても基準が違うという部分は、保育園教諭や保育士として働く際や子どもを通わせる保護者としても把握しておきたい基準ですね。

施設・設備の基準

施設設備においては、3歳以上児は幼稚園、未満児は保育園の基準が適用されています。幼稚園の基準に基づき2階建ての設備が原則ですが、保育所の基準も採用し特別な場合には0,1,2歳児に限り3階以上の利用も可能であるという基準も設けられています。

0,1,2歳児が3階で過ごし、3歳以上児が2階までで過ごすということは、移動の面などを考えると現実的ではないですよね。現場とのすり合わせを含めてまだまだ、改善の余地がありそうです。



子どもが過ごす施設の基準は、保護者としても気になる部分です。子どもが健やかに育つことが出来る様、そして保育士や幼稚園教諭、保育教諭が余裕をもって子どもと接することが出来る様に、それぞれの施設の枠を超えて基準が向上していくことに期待しましょう。