様々な場所で耳にする「食育」という言葉。食は、人間が生きていくのに無くてはならないものですね。大切だということはわかっていても、食育についてしっかり説明できる保育士は少ないのではないでしょうか。保育園における「食育」とはどのようなものなのでしょうか。
「食育」~歴史を振り返る
ここ10数年程、教育現場等では「食育」という言葉が多く聞かれるようになりました。2005年に「食育基本法」が制定されてから、この言葉が世に多く出回るようになったのです。
実は、「食育」という言葉が提唱されたのは今から100年以上前のこと。石塚左玄(1851~は漢方医学を学び、医師と薬剤師の資格を持ち、陸軍少将、陸軍薬剤監などとして活躍した人物です。彼が1896年(明治29年)に著した「化学的食養長寿論」の中で、学童=子どもの「食育」の重要性が記されています。明治時代にはすでに食育の重要性を指摘していた人がいたのですね。
その後、戦後の食糧難から高度経済成長を経て、食生活は大きく変わりました。核家族化や共働きによるライフスタイルの変化、外食産業や加工食品などの増加により、肥満や生活習慣病などの人も増えました。
そして狂牛病や鳥インフルエンザなど食の安全性を脅かす出来事もありました。国を挙げて、食について、食育の重要性を掲げる必要が出てきたのですね。
土や水、光に触れて…「野菜」を育ててみよう!
実際、野菜嫌いの子どもは多いですが、見た目の色やにおいなど、感覚的なもので嫌いになっている場合もあるようです。
野菜は土から水を吸い上げて育ったと知らない子ども達が、スーパーで無機質に並んでいるだけの野菜を目にするだけでは無理も無いでしょう。実際に土に触れ、種や苗から育てて、毎日水やりをして、花が咲いて実がついて……。このような過程を毎日体験することが、成長発達期の子どもの食に対する意識に大きな影響を与えます。
子どもたちとぜひ一緒に育ててみましょう!
育てやすいのはトマト・ナス・ピーマン・きゅうりなど。さやえんどうやインゲンマメもお勧めです。
数多く出来るものなら、収穫後、子ども達に順番で持ち帰ってもらうことも出来ますし、料理にも利用しやすいですよ。まだ幼いからわからないなどと思わずに、肥料のこと、太陽の恵みや水のこと、受粉についてなどもわかりやすく説明していくといいでしょう。
保育士も、その都度調べるので勉強にもなりますね。
いよいよ収穫…みんなでクッキング
野菜を収穫した後はいよいよクッキングです。
でもちょっと待って。すぐに料理をしてしまうのではなく、野菜に触れて、色や形、においなど十分観察をしてみましょう。野菜の絵を描いたり、野菜の一部を使って野菜スタンプなどをしてみるのも楽しいですよ。
食べることだけが食育ではないのです。「たねからこんなに大きくなったね。」「やさいのおなかの中ってこうなっているんだね。」など、子ども達の声が聞こえてきそうです。
野菜からどんな料理が出来るのか、みんなで考えてみると子どもたちは驚くほどの素敵なアイデアを口にしてくれることでしょう。
玉ねぎやとうもろこしの皮むき、ピーマンやにんじんなどの包丁切りも交代で行ってみましょう。料理が完成したら、みんなでおいしくいただきます。「みんなで育てた野菜が入っているよ。大切に食べようね。」と声かけをすれば、子ども達の姿勢もしゃきっとすることでしょう。このように、食べる時のマナーにも繋げていくことができますね。
人間、食べることをしないと生きていけません。それは一生続いていきます。生きる基本である「食」。子ども時代には、単に食べることでだけでなく、栽培、料理など様々な経験を通じて食に親しんで欲しいですね。子ども達に教えるのではなく、保育士も一緒に学ぶ。大人、子どもではなく同じ人間として食に関する体験を共有する。明日からの保育で心がけてみませんか。