両手でぎゅっと握ってお団子作り、裸足でぺたぺたと歩いて、背中やお腹も泥だらけ!体全体で楽しめる泥遊びは、楽しさいっぱい。きゃっきゃっとはしゃぐ子ども達の声が聞こえてきそうですね。でも中には泥んこに触ることも、近づくことも嫌がる子どもがいます。そんな、泥んこあそびを嫌がる子ども達にクローズアップしてみましょう。
泥で手や服が汚れるのが嫌い?~感覚過敏の子ども~
みんなが泥んこ遊びをしているのに断固として拒否、一生懸命誘っても近づかない……それは子どものわがままなのでしょうか。保育を勉強中の方や保育士なら、そうでないことはわかりますよね。
そう、そこには子どもが泥遊びを嫌がる「理由」があるはずです。その理由が発達障害や感覚過敏の場合もあるということは始めにきちんと理解しておきたいところです。
発達障害とは
「発達障害者支援法」における発達障害の定義では、「『発達障害』とは自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発言するものとして政令で定めるものをいう。」とされています。
この発達障害を診断する基準としては、WHO(世界保健機関)の国際疾病分類である「ICO-10」と米国精神医学会の「DSM-5」の2つが主に使われています。
この「DSM-5」の中の自閉症スペクトラム障害の診断基準の1項目に、感覚の入力に対する反応が異常、感覚や環境に関する関心が異常(感覚過敏、感覚鈍麻など)というものがあります。この感覚過敏の項目は、DSM-5の診断基準が発表された時に追加された項目で、前版であるDSM-4には記載がありませんでした。
保育士として、泥んこ遊びを極端に嫌がり発達障害を疑うような「気になる子」がいた時に、決めつけることは当然出来ませんが、「そうかもしれない」と頭に入れて接することは非常に重要ではないでしょうか。
上記の障害だけに感覚過敏が当てはまるわけではなく、他にも様々な要因があることも付け加えておきます。
泥んこ遊びや、手や服に泥がつくことを嫌がる子どもで、このような感覚過敏が疑われる場合には、無理強いをせず、泥んこ遊びの様子を保育士と一緒に見たり、少し離れたところでおもちゃなどに触れて遊んだりするなど、配慮をする必要があります。
経験不足からくる場合には
先述したような症状でなくても、経験不足から泥んこ遊びを嫌がる子どももいるはずです。興味はあるけど、何だか気持ち悪い、どのように遊んで良いのかわからないといった気持ちです。
現在の家庭は、おもちゃと言えば市販のものが多く、自然や素材で遊んだ経験のある子どもが少ないようです。泥という自然物に触れ、遊ぶことで、心が豊かに育ち、科学的な興味への芽生えにも繋がります。
そして身体を動かし五感を使うことで、心身の発達が促され、皮膚も鍛えられ、雑菌に対する抵抗力も強化されます。その中で仲間や集団でのやりとりも生まれます。
また、泥は形が自由自在に変えられる可塑性の高い素材です。容易に変形し、戻せる可塑性の高い素材は、手や指先の発達を促し、創造力を培います。このように泥んこ遊びには良い面がたくさんあります。
経験不足の子どもには、泥遊びの代用として、日頃から水、粘土、紙などの形が変化する可塑性のある素材で遊ぶ機会を保育の中でどんどん増やしていきましょう。
小麦粉粘土やフィンガーペインティングなどで身体が汚れる経験を日常的にしていくことで、泥への抵抗感も徐々に減っていきますよ。
子どもが泥んこ遊びを嫌がる原因は様々なので、まずはそれを探ってみてください。その上で、子どもの無理の無い範囲で、自然物や可塑性の高いものにたくさん触れる機会を。そして、保育士自ら積極的に身体を汚してモデルになりましょう。泥んこ遊びの楽しさ、子どもたちに伝えていきたいですね!