保育士不足が叫ばれている昨今、各自治体では保育士資格を所持しているにも関わらず、保育の現場から離れてしまっている潜在保育士に向け、積極的に復職支援を行っています。そこで今回は潜在保育士が現場を退いた主な理由に加え、復職支援の内容についてご紹介したいと思います。
保育士不足の原因
男性保育士が増えてきているとは言え、まだまだ保育の現場は女性が多いです。
女性が多いという事は結婚・出産の際に保育の仕事から離れ、専業主婦になる人、また子どもがある程度成長し、外で働く事になっても保育の仕事ではない職種を選択する人が多いようです。
その理由として、保育の仕事は残業や持ち帰りのものも多く、勤務時間外でも拘束されがちという事があげられ、家庭との両立が出来るかと考えた時に不安を感じる人が多く存在しているのです。
また、外から見た「保育士」という仕事のイメージと実際の仕事内容のギャップも大きいです。
養成校等を卒業したり、試験に合格したりして目標だった保育士となったものの、理想と現実の差を感じ、仕事を離れる人も多くいるように思います。
子育て経験を経た、中堅保育士の重要性
慢性的な保育士不足を補うために、保育園側では新卒の保育士を多く採用されていますが、あまりにも若手ばかりだと預ける保護者側としては少々不安を感じてしまいます。
実際に若手保育士も見本となる中堅保育士がいない中、手探り状態で勤務している人も多くいるでしょう。
本来であれば保育技術も後輩へ受け継がれていくもの…しかし保育技術を教えてくれる中堅の保育士が少なくなっているので、現場は混乱してしまいます。
そこに子育てが落ち着き、復帰してきた中堅保育士がいるとどうでしょう。
保育技術の他にも自らも子育て経験者という事で、保護者側の立場でも物事を考える事が出来る保育士は、保育園にとっても若手の保育士にとっても保護者にとっても心強い存在となるはずです。
何らかの理由で保育の現場を退いている潜在保育士。その人たちを現場に復帰させる事が出来ると、後輩の育成や保育の質の向上も期待できるとし、国や自治体でも積極的に動き始めているのです。
潜在保育士の復職に向けた国と自治体の取り組み
潜在保育士の中にも「絶対に保育の仕事をしたくない」という人もいれば、「また保育の仕事をしたいけれど、何年もブランクがあって不安」という人もいます。
そんな不安を抱えた潜在保育士のための、復職に向けたセミナーを積極的に行っているようです。
具体的には座学で最新の保育事情の説明や、子ども達の安全管理の講習を実施したり、実際に子どもと触れ合う「保育体験」を企画したりその内容はさまざまです。
例として北海道札幌市では平成28年10月31日に札幌市保育士・保育所支援センターを開設。潜在保育士のセミナーを積極的に開催しつつ、潜在保育士だけでなく養成校の学生を迎え、市内の保育園が施設説明会を行う等して、保育士不足解消に向け積極的に動き始めています。
また、厚生労働省では潜在保育士や新卒の保育士にむけたパンフレットを作成し、保育士確保に動き出しています。
パンフレットの内容としては新たに導入予定の国の施策が紹介され、民間の保育園で働く保育士の給与を平均で3.3%改善する事や、復職支援のセミナーの充実等について書かれているようです。
宮城県仙台市の保育園では「働いてくれる保育士の子どもを無料で受け入れます」とし、子育てが落ち着いた潜在保育士の人材確保に成功しています。
ご紹介したように、慢性的な保育士不足の解消に向け、国と自治体が一体となった政策が次々と行われているのです。
潜在保育士が「戻りたくなる」保育園とは
保育士確保に向け、国や自治体が積極的に動き出し、保育士の給与や勤務体制が見直される事は潜在保育士にとっても、また現役で働いている保育士にとっても大変すばらしい事であると感じています。
保育士という仕事は小さな子どもを預かるという責任に加え、家での持ち帰りの仕事、保護者とのやりとり、書類制作等、その仕事内容は幅広く、正直「給与と仕事量が見合わない」と不満を感じている保育士も多く存在しているからです。
新卒で働き始め、結婚出産を経ても、「また戻りたい」と思える環境が整備される事になれば、保育士不足という問題は少しずつ改善に向かうように感じています。
宮城県仙台市の保育園のように保育士の子どもの保育料無料と言ってしまえば、一見、保育園側では損をしてしまうような印象を受けます。
しかし先述したように、子育て経験がある保育士は保育園側としては大きな戦力になる事は間違いありません。
一時的に損をしてしまったとしても、長い目で見れば保育士の子どもが卒園した後でも引き続き働いてもらえる可能性も高いので、将来的にはプラスに働く事でしょう。
「潜在保育士」から復帰のポイントはコチラ
一時的なリスクを背負ってでも、保育士を確保していく事が大切なのです。様々な事情により、保育の現場から遠ざかっている潜在保育士。保育士不足をきっかけに保育士の仕事の重要性が改めて見直されつつあり、政府や自治体も積極的に動き始めています。潜在保育士が戻りたくなる職場環境が整う事で、経験豊富な保育士が増え、保育の質も向上する事でしょう。政府の呼びかけやセミナー等の開催が潜在保育士の復職につながる事を切に願うばかりです。