保育士の給与額の低さは非正規保育士の増加にある!?
保育士不足が深刻な中で、正規保育士だけでは保育所の運営が成り立たない状況にあります。その結果、非正規保育士が増え、保育所で働く常勤保育士の比率は正規保育士6割に対して非正規保育士4割という、もう少しで半数に達する数が常勤の非正規保育士として働いています。
常勤非正規保育士と正規保育士とでは、規定されている勤務時間が違うことが一般的ですが、勤務時間内に仕事が終わらないことで正規保育士だけではなく非正規保育士も残業を余儀なくされているという実態もあります。
では、気になる給与面の違いはどうでしょうか?奈良県の調べによると公立保育園の正規保育士の平均年収は502.8万円、非正規保育士は210.5万円。社福法人の平均年収は343.0万円、非正規保育士は187.8万円となっています。
参照~保育白書:正規保育士(常勤)と非正規保育士(常勤)の平均給与などこの調査から分かることは、公立保育園でも社福法人の保育園でも正規保育士と非正規保育士の給与に大きな差があるということ。そして、同じ正規保育士であっても公立保育園と社福法人の平均年収には大きく差があるということです。
この理由としては、正規保育士が月給制であることに比べて、非正規保育士は時給制なので月額換算した時にも、正規保育士よりも低くなってしまいます。そして賞与が支給されないか正規保育士よりもかなり低いことが挙げられます。
公立保育園と社福法人の保育園に勤める保育士の年収の違いは、キャリアによって給与がアップする制度が社福法人では確立されていないことも大きな原因です。 実際に平均勤務年数は公立保育園で19.4年であるのに比べて社福法人では7.5年。社福法人ではベテランの保育士が長く勤務を続けていく魅力ない、もしくは育休制度なども含めて長く続けられる環境が整っていないという実態が見えてきます。
保育士の給与に直接影響する公定価格とは?
公定価格とは、旧制度では保育単価と呼ばれ、保育園を運営するにあたって必要であると国が定めた費用です。私立保育園は、この公定価格を基準として市町村から委託費を受け取り 運営されています。
人件費は公定価格の約8割。ただ、ここで大きな問題があります。公定価格で換算された人件費は、国の基準で決められています。例えば、0歳児は子ども3人につき保育士1人、1歳児は子ども6人につき保育士1人という配置で考えられているのです。
しかし、現場ではとてもではありませんがその人数では保育が成り立ちません。その結果、各私立保育園では国の基準を上回る保育士を雇い入れ、実際の保育士配置数は、国基準の1.8から2倍と言われています。
例えば、国の基準が保育士10人の配置で運営できる保育園には10人分の人件費しか支給されません。しかし、実際に働いているのは20人。その結果10人分の人件費を20人で分け合うという事態が発生してしまうのです。単純に計算しても、保育士の給与は基準額の半額となります。
公定価格で計算されている保育士人数と実際に働いている保育士人数の違いが、保育士の給与を下げているという事実があるのです。
基準とかけ離れた園長・主任の給与額が保育士の給与を下げている!?
公定価格では、人件費という括りではなくもっと細かく、園長・主任・保育士の基準額も換算されています。この基準額によると園長の年収は466万円、主任の年収は430万円、保育士の年収は363万円とされています。
しかし実態は園長の平均年収は628万円で基準額よりも162万円多く、主任の平均年種は449万円で19万円多く、保育士だけが常勤であっても316万円と47万円少ないという調査結果が出ています。
参照~保育白書:園長・主任保育士の平均給与額と公定価格積算額もちろん、基準額やそれよりも低い額で働いている園長や主任もいるでしょう。そもそもこの基準額が園長や主任という、保育園の運営・管理に責任を負う立場の人が受け取る額として適切であるかという疑問は残ります。ただ、現在はこれだけの基準と実態の差が見えてくるのです。
公定価格で設定された園長、主任の年収が適切であるかということ、そして保育士に最低でも基準額が支給されるような、制度が確立されることを願います。
まとめ
保育士の給与額が低い理由が様々な側面から見えてきました。非正規保育士が増えているという実態には、保育園側が安い給与で保育士を雇い入れたいという意図もありますが、過去に正規保育士として働きていたけれど仕事量の多さに、正規保育士はもうこりごりという保育士が多いという事実もあります。