保育所をはじめ様々な児童福祉施設には、必ず配置しなければならない職員の種類が決まっています。当然、重要な部分ですので、必置の職員の種類を問う問題が、保育士試験にも多く出題されています。児童福祉施設の種類は数多くありますので、正式名称を覚えるのは案外大変です。また、以前と名称が変わったり新設されたりしたものもありますので、名称と併せて職員配置を見ていきましょう。
児童福祉施設の名称
児童福祉施設とは、児童福祉法や、その他の法令に基づいて、児童福祉に関する事業を行う施設の総称です。児童福祉法の第36条から第44条の2には児童福祉施設の概要が述べられており、それらの児童福祉施設は以下の施設です。これらの施設名は、法改正により変わったものもあります(変更がわかりやすい様に、以前の名称も併せて載せています)。
施設の名称と内容
- ・助産施設(第36条)
- 保健上必要があるにもかかわらず、経済的理由により、入院助産を受けることができない妊産婦を入所させて、助産を受けさせることを目的とする施設
- ・乳児院(第37条)
- 乳児を入院させてこれを養育し、あわせて退院した者について相談その他の援助を行うことを目的とする施設。
- ・母子生活支援施設(第38条)
- 母子家庭の母と子(児童)を入所させて、これらの者を保護するとともに、これらの者の自立の促進のためにその生活を支援し、あわせて対処した者について相談その他の援助を行うことを目的とする施設。
1997年までは「母子寮」と呼ばれていた施設です。 - ・保育所(第39条)
- 保護者の委託を受けて、保育に欠けるその乳児又は幼児を保育することを目的とする通所施設。
- ・幼保連携型認定こども園(第39条の2)
- 2006年に成立した認定子ども園法によって設置されるようになった、幼稚園と保育所との機能を併せ持つ施設。ここで働く職員を保育教諭(幼稚園教諭免許状と保育士資格の両方を持つもの)と呼んでいる。
- ・児童厚生施設(第40条)
- 児童遊園、児童館等児童に健全な遊びを与えて、その健康を増進し、又は情操をゆたかにすることを目的とする施設。
- ・児童養護施設(第41条)
- 保護者のない児童、虐待されている児童、その他養護を要する児童を入所させて、これを養護し、あわせて退所したものに対する相談その他自立のための援助を行うことを目的とする施設。
- ・障害児入所施設(第42条)
- 障害児を日々保護者の下から通わせて、支援を提供することを目的とする施設。福祉型と医療型にわかれている。 以前は、「知的障害児施設」「盲ろうあ児施設」「肢体不自由児施設」「重症心身障害児」の名称であったため、このように学習した保育士の方も多いと思いますが、現在は障害児入所施設という名称に統合されました。
- ・児童発達支援センター(第43条)
- 障害児を日々保護者の下から通わせて、支援を提供することを目的とする施設。福祉型と医療型にわかれている。以前は「知的障害児通園施設」「難聴幼児通園施設」「肢体不自由児通園施設」等の名称で呼ばれていました。
- ・児童心理治療施設(第43条の2)
- 軽度の情緒障害を有する児童を、短期間入所させ、または保護者の下から通わせて、その情緒障害を治し、あわせて退所した者について相談その他の援助を行うことを目的とする施設。平成29年4月よりこの名称になりました。それ以前は「情緒障害児短期治療施設」の名称でした。
- ・児童自立支援施設(第44条)
- 不良行為をし、又はするおそれのある児童などを入所させて、必要な指導を行い、その自立を支援する施設。
- ・児童家庭支援センター(第44条の2)
- 地域の児童の福祉に関する各般の問題につき、児童、母子相談に応じ、必要な助言、指導を行い、あわせて児童相談所、児童福祉施設等との連絡調整その他厚生労働省令の定める援助を総合的に行うことを目的とする施設。基本的に他の児童福祉施設に併設される施設。
以上2017年11月現在における児童福祉施設の名称を挙げていきましたが、今後も法改正とともに名称は変更になる可能性がありますので、チェックしていきましょう。
必ず置かなければならない職員配置
平成29年度 前期 保育士試験 社会的養護の問6では、児童福祉施設における職員に関する問題が出題されました。
職員の配置基準の覚え方
数多くの児童福祉施設がある中で、職員配置について覚えるのはなかなか難しいことです。職員の配置基準については「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」に記載されていますが、順番通りにただ暗記していくより、まず、施設ごとに配置の共通点があるものをまとめて覚えると良いでしょう。その後、以下の表と児童福祉施設の設備及び運営に関する基準とを照らし合わせながら確実に覚えていきましょう。
- 児童指導員・保育士・児童発達支援管理責任者は、障害児入所施設・児童発達支援センターでの配置が義務付けられています。
- 児童指導員・保育士は、乳児院・児童自立支援施設・母子生活支援施設での配置は義務づけられていません。乳児院は保育士が必置だと勘違いしがちなので気をつけましょう。
- 個別対応職員・家庭支援専門相談員は、乳児院・母子生活支援施設・児童養護施設・児童心理治療施設・児童自立支援施設の5施設のみ必ず置かなければならないとされています。
設備及び運営に関する基準
児童福祉施設名 | 配置する職員 | 児童福祉施設の設備及び運営に関する基準 |
---|---|---|
助産施設 | ||
乳児院 (乳幼児10人未満を入所させる乳児院を除く) |
小児科の診療に相当の経験を持つ医師又は嘱託医・看護師・個別対応職員・家庭支援専門相談員・栄養士・調理員(調理業務の全部を委託する施設を除く) | 第3章 第21条 |
乳児院 (乳幼児10人未満を入所させる乳児院) |
嘱託医・看護師・家庭支援相談員・調理員またはこれに代わるべきもの | 第3章 第22条 |
母子生活支援施設 | 母子支援員・嘱託医・少年を指導する職員・調理員 | 第4章 第27条 |
保育所 | 保育士・嘱託医・調理員 | 第5章 第33条 |
児童厚生施設 | 児童の遊びを指導するもの(保育士・社会福祉士の資格を有するもの・幼、小、中、義務教育学校、高、中東教育学校の教諭となる資格を有するもの等条件あり) | 第6章 第38条 |
児童養護施設 | 児童指導員・嘱託医・保育士・個別対応職員・家庭支援専門相談員・栄養士・調理員・看護師(乳児が入所している場合) | 第7章 第42条 |
福祉型障害児入所施設 (主として知的障害のある児童を入所させる施設) |
嘱託医・児童指導員・保育士・栄養士・調理員・児童発達支援管理責任者 | 第8章 第48条 |
福祉型障害児入所施設 (主として自閉症児を入所させる施設) |
知的障害のある児童を入所させる施設の配置職員に加えて医師・看護師 | |
福祉型障害児入所施設 (主として盲ろうあ児を入所させる施設) |
知的障害のある児童を入所させる福祉型施設の職員配置に加えて看護師 | |
福祉型障害児入所施設 (主として肢体不自由児を入所させる施設) |
知的障害のある児童を入所させる福祉型施設の職員配置に加えて看護師 | |
医療型障害児入所施設 (主として自閉症児を入所させる施設) |
医療法に規定する病院として必要な職員・児童指導員・保育士・児童発達支援管理責任者 | 第8章の2 第58条 |
医療型障害児入所施設 (主として肢体不自由児を入所させる施設) |
自閉児を入所させる医療型施設の職員配置に加えて理学療法士または作業療法士 | |
医療型障害児入所施設 (主として重症心身障害児を入所させる施設) |
肢体不自由児を入所させる医療型施設の職員配置に加えて心理指導を担当する職員 | |
福祉型児童発達支援センター | 嘱託医・児童指導員・保育士・栄養士・調理員・児童発達支援管理責任者・機能訓練担当職員等 | 第8章の3 第63条 |
医療型児童発達支援センター | 医療法に規定する診療所として必要な職員・児童指導員・保育士・看護師・理学療法士又は作業療法士・児童発達支援管理責任者 | 第8章の4 第69条 |
児童心理治療施設 (情緒障害児短期治療施設) |
医師・心理療法担当職員・児童指導員・保育士・看護師・個別対応職員・家庭支援専門相談員・栄養士・調理員 | 第9章 第73条 |
児童自立支援施設 | 児童自立支援専門員・嘱託医・精神科の診療に相当の経験を有する医師または嘱託医・個別対応職員・家庭支援専門相談員・栄養士・調理員 | 第10章 第80条 |
児童家庭支援センター | 児童福祉法 第13条第2項各号のいずれかに該当するもの。 | 第11章 第88条の3 |
以上、児童福祉施設の種類と職員配置についてまとめました。社会的養護では、保育所以外の児童福祉施設について出題されることが多いので、なじみの少ない他施設については特にしっかり学習しておきましょう。